081519 ランダム
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ギロホリック

チョコレートパニック 2

 
         


赤い包みを両手にそれぞれ持ちながら、夏美は庭に回った。

「こっちがギロロ、こっちがギロロ・・」

左手に持ったほうの真っ赤なハートを自分の心臓の上に重ねるように抱えな

がら歩調に合わせ、歌うように唱えていた。


テントの前の見慣れた姿。今日も武器の手入れに余念がない。

「まったく、飽きないわねえ。そんなに磨いてたらすり減っちゃうんじゃ

ない?」

後手にチョコを隠しながらギロロのほうに歩いていく。

夏美の声に顔を上げたギロロの顔がいっそう赤みを増したように見えた。

「ふ、ふん。」

その顔を隠すようにすぐまた手元のサブマシンガンに視線を落とす。

「・・何か用か?」

「ん?うん、ちょっと、ね・・・」

なんとなくいつもとちがう様子に、ギロロが顔を上げた。

「・・・これ、あげるから!」

夏美は左手に持ったほうの包みをぶっきらぼうにギロロに差し出した。

「こ、これは・・」

不覚にもますます顔が赤くなるのがギロロ自身にもわかった。

「あ、あんた甘いとまた文句ばっか言いそうだから、すごくお砂糖控えて

うんと苦めにしといたわよ。それでもチョコレートだからやっぱ甘いとは

思うけど・・ま、たいしたもんじゃないし・・・無理に食べてもらわ

なくてもいいんだけど・・。」


しばらく呆けたように銀色のリボンを見ていたギロロがようやく口を開い

た。

「そ、そんなに言うなら、もらってやらんでもない。」

「あら、別に無理しなくてもいいわよ!」

ムッとした夏美がそう言いながら引っ込めようとすると

「食ってやると言っただろ!」

少し慌ててギロロがチョコに手を伸ばした。

「素直に喜んでくれる人にあげるから、いいですってばっ!」

その一言でさらに焦ったギロロが強引にチョコに飛びついたのと、

夏美がチョコを持った手を高く引いたのが同時だった。

バランスをくずした夏美が派手に尻餅をついて転び、その上にギロロが乗っ

かる形となり・・・・・

夏美の手からこぼれ落ちたふたつのチョコレートはコロコロと芝の上を転が

っていった。

「・・ちょっとぉ・・・重いんですけど・・」

「す、す、すまん!!」

慌てて夏美から降りたギロロは、夏美が起きるのに手を貸そうと腕を伸ばし

た。

その手を無視して起き上がり、転がったチョコのところまで歩きながら

「あ~ぁ、もうどっちがどっちだかわかんないじゃない!」

ブツブツ言う夏美が拾い上げるより早く、片方のチョコにギロロが飛びつい

た。

「食うぞ!誰がなんと言おうが全部食ってやる!!」

言うが早いか無造作にリボンをはずし、ビリビリと包装紙を破く。

あっけに取られた夏美が、それが自分の作ったものでない方だ、と気付く

のと同時に、牙をむき出しにしながら大口を開けたギロロが丸ごとチョコ

を口に放り込んだ。

「これ!あたしのじゃない!」

夏美が叫んだとき、ギロロがゴクリとチョコを飲み込んだ。

「やだもう!あんたモアちゃんにあげるの、食べちゃったじゃない!

ああ、どうしよ・・ボケガエルにあやまらなきゃ・・。」

その時ギロロの首がガクッとうなだれた。

「・・何よ、おいしくないの?それとも詰まった?ばかねえ、慌てて食べる

から・・」

夏美がギロロの肩に手を置き、反対の手で背中を軽く叩くとギロロがゆっく

り顔を上げた。

「・・・・・るな。」

ギロロが不明瞭な声で何かつぶやいた。

「なに?」

背中の手を休めず夏美が聞き返す。

「気安く触るな。」

「??あんた何言ってんの?」

まだ背中に手を回したまま夏美が怪訝そうにギロロの顔を覗き込もうとした

時、肩においた方の手首をつかまれた。と、次の瞬間、口の中に土の味が広

がった。

左腕を背中の上に捻り上げられたまま、夏美は地面に突っ伏していた。

「痛っ!ちょっと!なに・・」

言いかけた不平は頬に押し付けられた銃口で遮られてしまった。



























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